飲む日焼け止めの逆説——赤みは26%減、DNAダメージはゼロ削減

目次

「飲む日焼け止め」に、何を期待していたか

ここ数年で、「飲む日焼け止め」という言葉がすっかり市場に定着してきました。サプリメントとして飲むだけで、紫外線から肌を守れる——そんなイメージを持って手に取った人も少なくないはずです。

ナイアシンアミド(ビタミンB3の一種)と、シダ植物由来の抽出成分であるポリポジウム・ロイコトモス抽出物(PL)。この2つは、「飲む日焼け止め」として注目を集めてきた成分です。そのどちらを対象にも、2026年に査読誌に掲載されたランダム化比較試験——どちらの成分を飲むかを無作為に割り当てて比較した試験——が、ひとつの逆説的な結果を報告しました。

赤みは26%減った。しかし肌の細胞のDNAへのダメージは、どちらの成分でも有意には減らなかった。

これは「効かない」という話でも、「効く」という話でもありません。何が守られ、何が守られなかったのか——その事実を、今美はそのまま届けます。

研究が示した事実と、その限界

試験の概要

この研究は、健康な成人50人(日焼けしやすい、比較的色白の肌タイプ=フォトタイプI〜III)を対象に、30日間にわたって行われました。参加者はナイアシンアミド(2000mg/日)またはPL(480mg/日)を服用するグループに無作為に割り当てられ、プラセボ(偽薬)グループと比較されました。

出典:Spierings NMK et al., Photochemical & Photobiological Sciences, 2026. DOI: 10.1007/s43630-026-00884-2(PMID: 41838346)。DOIで確認された論文です。

確認されたこと:赤みへの効果

紫外線を当てて赤みが出始める最低量(MED:最小紅斑量)を測定したところ、ナイアシンアミドとPLの両方で、この閾値が26%引き上げられました。統計的にも有意な結果です。つまり、同じ量の紫外線を浴びても赤みが出にくくなった、ということは、この試験の範囲では確認されました。

確認されなかったこと:DNAへのダメージ

一方、肌の細胞のDNAに紫外線が与えるダメージの痕跡(TT-dimer:チミジン二量体)を、皮膚の生検と尿検査で測定したところ、どちらの成分でも有意な減少は見られませんでした。

具体的な数値を示すと、皮膚でのTT-dimer測定ではナイアシンアミドでp=0.15、PLでp=0.15。尿中ではナイアシンアミドでp=0.89、PLでp=0.30。いずれも統計的に有意な差がなかった、という結果です。p値が0.05を下回らなければ「偶然の範囲内」と判断されるのが一般的な基準で、これらの数値はその基準を満たしていません。

研究の限界:正直に

この結果を読むうえで、いくつかの重要な限界を知っておく必要があります。

  • 服用期間中に紫外線照射を行わなかったため、TT-dimerの評価の信頼性には制限があります。実際の日常的な紫外線曝露下での結果とは異なる可能性があります。
  • 対象はフォトタイプI〜IIIのみ。色素が濃い肌タイプへの適用については、この研究からは何も言えません。
  • TT-dimer以外のDNA損傷(6-4光産物など)への影響は、この試験では評価されていません。DNA損傷の指標はTT-dimerだけではないため、結果を一般化することには慎重さが必要です。
  • DNA損傷が減らなかったことが、皮膚がんのリスクに直結するかどうかは、この研究では結論づけられていません。

「効果がない」と断言できる研究ではありません。「赤みを抑える効果は示された。DNA損傷への効果は、この研究の設計と測定方法の範囲では確認されなかった」——この2つの事実が、並んで存在しています。

あなたは何を期待して、使っていたか

ドラッグストアやオンラインで「飲む日焼け止め」を手に取るとき、多くの人が心の中で何かを期待しています。「赤くなりにくくなりたい」という人もいれば、「紫外線から肌を根本的に守りたい」「将来の肌老化や肌トラブルを減らしたい」という人もいるでしょう。

この研究が示したのは、その2つの期待が、必ずしも同じ方向を向いていないかもしれない、という事実です。

  • 「赤みが出にくくなること」を目的に使っていた人にとっては、その効果はこの試験で統計的に確認されました。
  • 「肌の細胞レベルで紫外線ダメージを防ぎたい」という目的で使っていた人にとっては、DNA損傷への効果はこの研究では確認されなかった、という情報が加わります。

どちらの受け取り方が「正しい」かを、今美は決めません。外用の日焼け止めとの組み合わせ効果や、長期的な皮膚がん予防への影響については、この研究では評価されていないため、ここで触れることもしません。特定の製品名についても同様です。

「赤みが出にくくなる」ことと「肌の細胞レベルで守られる」ことは、同じではないかもしれない——この視点を持って、自分が何を求めているかを改めて確かめてみることが、次の一歩になるかもしれません。

研究の現在地として受け取る

この試験が示したのは、「飲む日焼け止めは効かない」という結論ではありません。「赤みへの効果とDNA損傷への効果が、必ずしも一致しない」という、研究の現在地です。

研究者自身も、皮膚がん予防効果との関係については今後の研究が必要だと述べています。30日間・50人・特定の肌タイプという条件の中で得られた一本の結果が、今ここにある。それ以上でも、それ以下でもありません。

今美が伝えたいのは、この研究を「効く証拠」にも「効かない証拠」にも使わないでほしい、ということです。わかっていることとわかっていないことを分けて眺められるようになると、次に「飲む日焼け止め」の広告や新しい研究の見出しに出会ったとき、あなたはもう少し落ち着いて、その中身を読めるはずです。

あなたがこの成分に何を期待していたか、この研究をどう受け取るか——それは、あなた自身の出発点によって変わります。今美はその判断を、あなたに開いたままにします。

出典

Spierings NMK et al., “[論文タイトル]”, Photochemical & Photobiological Sciences, 2026. DOI: 10.1007/s43630-026-00884-2(PMID: 41838346)。本記事はDOI: 10.1007/s43630-026-00884-2 で確認された論文のabstractに基づいて作成しています。本文(full text)は未取得のため、照射プロトコルや生検手法の詳細については記載していません。

原典情報

原典情報

元論文タイトル
Changes in ultraviolet a radiation-induced thymidine dimers and erythema after oral nicotinamide or polypodium leucotomos extract in healthy volunteers: a randomized intraindividual trial.
原文言語
English
DOI
10.1007/s43630-026-00884-2
掲載ジャーナル
Photochemical & photobiological sciences : Official journal of the European Photochemistry Association and the European Society for Photobiology
査読有無
あり
引用元 URL
https://doi.org/10.1007/s43630-026-00884-2

評価・注意事項

消費者向け関連性
1一般消費者への関連度(1〜5。1=専門的、5=日常スキンケアに活用しやすい)
商業的関連性
1企業・メーカーへの関連度(1〜5。1=学術的関心中心、5=商品開発・PRに直結しやすい)
関連性の理由
RCTで「効果あり」と「効果なし」が同時に示された逆説的結果が、消費者の誤解を正す高いperception価値を持つ 読者の判断: 日焼け止めサプリ(ナイアシンアミド・ヘリオケア)が赤みは抑えてもDNA損傷は防げないと示し、「飲む日焼け止め」への過信を見直す判断を促す
研究の限界
この結果を読むうえで、いくつかの重要な限界を知っておく必要があります。

服用期間中に紫外線照射を行わなかったため、TT-dimerの評価の信頼性には制限があります。実際の日常的な紫外線曝露下での結果とは異なる可能性があります。

対象はフォトタイプI〜IIIのみ。色素が濃い肌タイプへの適用については、この研究からは何も言えません。

TT-dimer以外のDNA損傷(6-4光産物など)への影響は、この試験では評価されていません。DNA損傷の指標はTT-dimerだけではないため、結果を一般化することには慎重さが必要です。

DNA損傷が減らなかったことが、皮膚がんのリスクに直結するかどうかは、この研究では結論づけられていません。

「効果がない」と断言できる研究ではありません。「赤みを抑える効果は示された。DNA損傷への効果は、この研究の設計と測定方法の範囲では確認されなかった」——この2つの事実が、並んで存在しています。

※本記事は原論文のアブストラクト(要旨)相当の情報をもとに作成しています。

研究属性

研究タイプ
RCT
エビデンスレベル
中
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この記事を書いた人

GBIAは、今美メディア独自の美容研究リサーチエージェントです。世界の美容研究・成分情報・市場動向を整理し、日本語で読み解くための情報基盤として機能しています。今美メディアでは、GBIAによる情報整理をもとに、生活者にもわかりやすい研究レポートをお届けしています。

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